[ML談義] メガネ難民のために協会は「他店購入メガネ相談店」の設置を

岡本
『眼鏡調整の達人』(メディカ出版)の著者の澤ふみ子先生に、2010年7月の大阪
での研究会で特別講演を依頼しました。
澤先生によると、特に眼鏡業界に向けて宣伝をしたわけでもないのに、眼鏡業界からの反響も予想以上にあったとのことでした。

あの本を読んで私が特に感じましたことは、累進メガネを作って具合が悪く、それを買ったメガネ店に相談してもらちがあかず、他の店に行っても、自分の店のお客さんではないということで真剣に取り組んでもらえず冷たくあしらわれたり、そのメガネの具合が悪い原因をはっきりさせないままにより高額のレンズを勧められたりとかで、とうてい納得できず、最後の頼みの綱として眼科へ相談をかけてくる……そういうお客さんが、我々の想像以上に多いのだな、ということです。

眼鏡店は営利企業ですから、そういう対応にもある意味ではしかたがない点もあるのかもしれませんが、ユーザーからは、業界に対する不信感の増幅でしかないでしょう。
よく、量販眼鏡店のチラシ広告などに「他店ご購入のメガネでも無料で調整やクリーニングをします」などということは書いてありますが、それはあくまでも、その広告を見て店に来たお客さんにはお茶にごしのフィッティングでもして、なるべくその店に親しみを感じてもらうという商策にすぎないようで、見え方の点で具合の悪いメガネに対して真剣に取り組もうという意思は、その文言からは私は見てとれません。

こういうことに対する業界の取り組みとして私が思うに、眼鏡業界が(たとえば、メガネ
の小売りの分野では国が認めた唯一の社団法人である日本眼鏡技術者協会が)全国各地にたとえば、人口50万人に一カ所程度の割で「他店購入メガネ相談店」というのを設置して、そこにいる認定眼鏡士に相談してください。
というふうな事業をしたらよいと思うのです。

その店については、協会のHPにわかりやすく掲載するわけです。
技術や知識の点で優れていて社会奉仕の意識もある認定眼鏡士がいる店に、それを引き受けてもらえばよいと思います。
もちろんですが、その相談に対する対応姿勢は自店の儲けではなくお客様本位でなくてはいけません。
それでも、うまくいけば、その相談者を次からは自店のお得意さまにできるかもしれないのですから、その相談店になることを断る眼鏡士はいないと思います。

いま、協会はHPで相談コーナーを設けていますが、メガネの場合、直に合って話を聞いたり、現物のメガネを調べたりしないとどうにもならないことがほとんどだと思うのです。
上記の件につき、みなさんはどう思われますでしょうか。特に認定眼鏡士のかたのご意見を募ります。

野々村
私は無条件でお受けします。
安売り業者扱い、処方箋絡み、通販関係、なんでも来てください。
この業界の為に……なりたいものです。
ただ、腹ただしいことがいっぱいあるでしょうね。
そういうことは、ブログやHPで公表したいと思います。
その原稿集めに良いかも……(^_^)

浜田
岡本さんが提案されていることは、メガネユーザーにとって、好ましいことですし、また相談店になる眼鏡士にとっても有意義だと思います。
しかし、協会がそのような事業をするのは困難だと思います。なぜならメガネの不具合は、眼科がらみになる可能性が高くなるからです。
協会は眼科がらみになることは、いつも及び腰です。
眼科処方箋無料補償問題もそうですね。
もし協会がこの事業をやるとしても「他店購入メガネ相談店。(ただし眼科処方箋の場合の相談は受け付けません)」と、但し書きを入れての相談受付になるでしょうから、それではかえってユーザーに不信感をもたれるだけでしょうね。

岡本
なるほど。協会はなにかにつけて腰が重いですから、おそらくこういう事業はしないでしょうね。
でも、協会の経費をほとんど掛けずに、ユーザーのためになる事業なんですけどね。(経費をかけるとしたら、わずかの宣伝費くらいでしょう)それで、もし仮にこれをするとすれば、次のような考え方もできるかもしれません。

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協会からのお知らせ

「他店購入メガネ相談店」

当協会の認定眼鏡士が常駐する店の中から、他店で購入されたメガネにおける不具合に対して親身になって相談を受ける店を、各都道府県に設けました。

(ここに相談店の一覧表を載せる)

おことわり

(1)通信販売で購入されたメガネについては、いかなる不具合についてもご相談には乗れません。
通信販売の業者は、一度販売したメガネに対して他の同業者などから意見などを聞いても、それに対して誠実に対応する姿勢がなく、そもそも、個人対応で調製しなければならないメガネを通信販売する業者に技術者としての良心も見識もあろうはずがなく、それについては協会のサイトでも警告しています。
ですので、通販で購入された、メガネについては協会会員はご相談には乗れません。

(2)眼科処方により調製された眼鏡における見え方の不具合については、ご相談には乗れません。
その眼鏡処方は医療の一環として眼科医師の責任と権限でなされたものですので、医師でない我々がその処方に対して干渉することは望ましくないからです。

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このお知らせは、もちろんですが広報するものですが、見かけ上の目的の他に、通販での購入や、(子供以外が)眼科での眼科処方を受けることに対する予防線の意味合いも含ませるわけです。
それで、ユーザーは、これを見てどう思うかと推測をしますと、まず、(1)を見たら
「そうか、じゃあ、通販でメガネを買うのはやめよう」と思うかもしれません。

すでに通販でメガネを買って不具合で困っているユーザーには協会の相談店以外の店へ行ってもらったらいいわけですし、そういう人も、次からは通販を利用するのをやめるでしょう。

(2)を見たら、ユーザーはどう思うでしょうか。
すでに眼科処方で作ったメガネで具合が悪くて困っているユーザーはどう思うでしょうか。
また、次に作るメガネをメガネ屋で測ってもらおうか、眼科で測ってもらおうか、と考えているユーザーはどう思うでしょうか。
浜田さん、どうでしょう?

浜田 眼科処方箋でメガネを作るかたは

1、メガネは眼科の処方箋で作らないといけないと思っている。
2、検診などで眼科を受診したら、メガネの処方箋を書いてくれたから。
3、メガネ屋の処方は下手で、眼科の処方は上手と思っている。
4、以前にメガネ屋の処方でダメだった。

などですが、1番のかたは「ということは、メガネはメガネ店で検査してもらってもいい
んだ。眼科処方箋でも問題のあることも少なくないのだな・・・」

2番のかたは、(2)を見たら「眼科処方箋でメガネを調製するのは、やめたほうがよさ
そう・・・」
3番のかたは、「では、ひょっとしたら検査はメガネ屋のほうが上手なの・・・」と、思うかもしれません。
4番のかたは困るでしょうね。「メガネ屋の処方でダメで、眼科の処方でも具合が悪い。じゃ、どうすればいいの・・・・」と。

ですから、(2)は『眼の病気に関係ない屈折検査に上手な眼科は少なく、光学的知識に疎い眼科医も少なくありません。
それは、医師は病気を治すのが本職だからです。

もし、眼科処方箋で不具合が生じても、責任の所在があいまいになり、たらいまわしになるユーザーも少なくありません。
ですから、大人の普通のメガネを調製する場合は屈折検査を熱心に勉強している会員店で検査、調製することをおすすめします。
もちろん、病気のことは会員店ではわかりません。眼の病気に不安のあるかたは眼科を受診なさってください』というような文章を加えたらどうでしょうか。
難しいでしょうけど・・・・。

岡本 なるほど。この内容なら「おことわり」というよりも「解説」ですね。
ただ、協会がここまで真相を広報することは無理でしょう。
どちらにしても、協会は、対外的には認定眼鏡士の宣伝ばかりで、ユーザーに対する姿勢がどういうものなのかということが、いまひとつ分かりにくいですね。

それと、メガネというものは、その性質上、極端な安売りで、ちやんとしたメガネを調製できるはずがないわけです。
これは実際に現場で検眼、加工、フィッティングをやっている人間なら実感でわかります。このMLのメンバーのみなさんなら、全員おわかりになるでしょう。

薄利多売では、お客さん一人に十分な時間がかけられませんから、満足な仕事ができないのです。
ですから、「他よりもどんどん安く提供することはユーザーのためになること」なんていうのはメガネの場合は通用しません。
(もちろん、ぼったくりもいけませんが)

よく、安売りができる理由として、大量仕入れでコストを下げてウンヌン、なんて書いてありますがたとえば、私の場合、タダで手に入れた枠やレンズであっても、枠とレンズで一式2万円にもならないメガネなんて、調製販売する気になれません。
自分がこれだけの知識と経験と技術とエネルギーをそそぎ込んだものを、なんで、そんな値段で売らなければならないのか、と思います。

ですから、いくら分業で能率化をしたとしても、一式で1万円以下のメガネに、どれだけの検眼技術、加工技術、フィッティング技術が込められるのかは、まったく疑問と言わざるを得ないのです。

ですから、たとえ眼鏡公正競争規約に抵触しなくても、どう考えても無理な価格を宣伝している店の認定眼鏡士には、協会は警告を発するべきだと思います。
その場合の「低価格」の線引きをどこでするかという問題もありますが、とにかく、安売
りの問題は、眼鏡公正競争規約にさえ違反しなければいいんだ、という協会執行部の認識は改めるべきだと思います。

同規約に反しなければ違法性はないからかまわない、というのは、一般のメガネ店に対してはそれでよい、というか、同規約でしか取り締まれないからしかたがないわけですが、それよりも高い倫理性を要求されるはずの眼鏡「士」においてはそれではいけません。

メガネの通販は違法ではないけれど眼鏡士はやるべきではない、のと同様に極端な安売りは違法ではないけれど、眼鏡士はやるべきではないはずです。
極端な安売りでも、同規約に反しなければ(たとえば1万円未満のセット価格)かまわない、という考え方を、協会執行部が傘下の認定眼鏡士にたいして持っているのであれば、執行部は、認定眼鏡士の職業倫理ということについてあまり深く考えていないのではないか、と言われてもしかたがないと思います。
違法でなければよい……それは普通のメガネ屋に通用することです。

普通のメガネ屋よりも、より高い専門技術と誇りと責任感を持っているはずの眼鏡「士」であれば、違法でなくても、やってはいけないことはいけないのです。
品質や技術レベルはともかくとして、安いメガネに対する需要も、もちろん少なくないでしょう。

しかし、安ければ安いほど、ユーザーが満足できなくなるおそれが高まります。安かろう悪かろう、のメガネも、それなりの存在意義はあるのでしょうが、そういうメガネを作るのは、眼鏡士ではないメガネ屋に任しておいたらよいのです。

津田理事長は、業界誌に載った今年の年頭所感で、安売り競争の批判をしておられましたが、それだけでは実際何の効果も出てきません。
年頭所感にそう書くだけならいとも簡単です。

津田理事長には、年頭所感だけではなく、もっと実効性のある施策を実際に講じていただきたいと私は思います。

投稿日:2020年10月16日 更新日:

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