近視手術の後遺症対策研究会~ホールICLに感じる私の疑問
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                 ホールICLに感じる私の疑問

                             
岡本 隆博

  近視手術を行なっている施設において最近レーシックを受ける患者(お客さん)が
  どんどん少なくなっているので、これまでレーシックで売り上げをあげてきたクリニックは
  その後釜として、ホールICLに活路を見出そうとしている模様である。

      参考 → http://www.viva-lasik.com/archives/618.html

  上記のサイトも、その一例であるが、ここで私が疑問に思うことが3つある。


  【疑問1】

  ひとつは、なぜホールICLは3D未満の近視には適用されないのか、ということである。

  たとえば、ホールICLで-1.50Dの近視を矯正することは、技術的にはできないこと
  ではないと思う。

  弱度の近視なら、レーシックで、角膜を削って薄くする度合いが少ないので、
  術後の合併症や後遺症が少ないから弱度近視なら、わざわざ値が張るホールICL
  などしなくてもよいのだ、ということなのだろうか。

  しかし、レーシックで、近視の度数がさほど強くなくて、さほど角膜を削らなかった人
  でも、術後の後遺症が生じることがあるのだから、そういう理由だけで、
  弱度近視用のホールICLが作られていない、ということではないと私は思う。

  では、他にどういう理由があるのか。
  それがどうもよくわからないのである。


  【疑問2】

  二番めの疑問は、レンズの位置ずれによる「持ち込み斜位」である。
  その場合、水平方向よりも垂直方向の斜位の方がやっかいなのであるが、
  これは、東京の梶田眼科の梶田医師(眼科医の中では例外的に屈折に詳しい
  人である)も指摘しておられるところの、白内障の治療に使う眼内レンズの
  位置ずれによって起こる、斜位(隠れ斜視)と同じものであろう。

  この斜位は白内障の眼内レンズにおいては数パーセントの人に生じるとされている
  が、白内障術後にこの斜位をチェックする眼科は非常に少ない。

  当然ながら、ホールICLの近視手術を行う医師も、眼科医であろうが、
  そうでなかろうが、この斜位検査は、事前も事後もしないであろう。

  また、術後に眼精疲労が生じて他の眼科へ診てもらいに行った場合も、斜位検査を
  してくれるところは少ないので、原因不明のまま「手術は成功しているようですよ」と
  いうことで何の手立てもなされずじまい、ということが有りえるのである。


  【疑問3】

  3番目は、ホールICLによって近視の過矯正になってしまい、すなわち、
  遠視眼になってしまい、そのために眼精疲労や近見のつらさが一向に改善しない、
  といったことになる恐れがあるのである。

  では、レーシックに限らず、ホールICLでも、その結果としてなぜ、往々にして
  遠視(近視過矯正)になってしまうのであろうか。
  これには、二つの原因が有りえる。

  (1)意図的なもの

  正視を狙って手術をして、その結果、弱度の近視になってしまうと、遠方がやや
  ぼやけてしまって裸眼視力が1.5未満となってしまう。場合によったら、1.0も出ない
  かもしれない。そうなると患者には不満が出るだろう。

  そういう不満を防ぐために、あえて軽い遠視にして、若干の調節により、遠方でも
  明視して良好な視力を得るようにする、というやりかたが、レーシックでは、
  けっこうあったようである。

  ホールICLでも、同じ理由で同様のことがなされたとしても、まったく不思議ではない。

  (2)測定の不備によるもの。

  患者さんの眼の屈折異常の度数を確定する方法として、近視手術を行なう医療機関
  (医師や検査員)が頼りにしているのは、ほとんどの場合、他覚的な自動屈折計
  (いわゆるオートレフ)である。

  この器械が示す近視の度数は、まあまあ妥当なのだが、常に100%正確というわけ
  ではなく、ときどき、器械近視というものの影響と、両眼開放(融像視)の状態ではなく
  片眼視の状態での測定、ということから、測定される眼の近視の度数が強めに出て
  しまうことがある。

  そうなると、器械が示した近視度数をそのまま矯正するように指定すると、レーシック
  でもホールICLでも、近視過矯正になって(遠視眼になって)しまうわけである。

  この(2)による術後の遠視化を防ぐには、正確な自覚的屈折検査、しかも両眼開放屈折
  検査ができなければならないのであるが、それをちゃんとできる眼科医が、わが国に
  果たして何人いるのだろうか。

      参考 両眼開放屈折検査の意義と手法については、
          下記に示す拙著書に解説がある。

          『よくわかる眼鏡講座』 『眼鏡処方の実際手法』
          http://homepage1.nifty.com/EYETOPIA/books.html


  蛇足

  明治以来、これまでわが国の(世界の)眼科で行われてきた自覚的屈折検査は、
  被検眼の屈折異常度数を緻密に測定するためのものではなく、その眼の屈折異常
  を適当に矯正して、矯正視力が1.0以上出るのかどうか、出ないとすれば、
  どこまで出るのか、ということを知るために検査であった。

  だから、オートレフの出現以来、ほとんどの眼科では、オートレフで得た度数を
  左右別々に試験レンズで与えて、それで1.0以上の視力が出たら、
  それでおしまいなのである。

  また、眼鏡処方を希望する患者さんがいた場合に、それに対する適切な度数の処方
  を眼科の人間ではできないで、知り合いの眼鏡店に助けを求めているという眼科も
  少なくない。

  そして、眼鏡処方のときに、眼をあくまでも左右別々に捕らえて度数を決めるのが
  眼科の屈折検査であり、両眼視機能のことまでは手が回らないのが普通の眼科である。

  現状でそんな状態なので、ましてや近視手術に手を染めるような眼科に、
  今後は両眼開放の自覚的屈折検査で近視や乱視の度数を的確に求めてくれとか、
  斜位のチェックもきちんとやってくれとか要望しても、それは無理だと私は思うのである。



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