認定眼鏡士も通販をしたい?〜【眼鏡技術者のナマの声】
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[論展] 認定眼鏡士も通販をしたい?

                                    岡本 隆博


  協会が会員にアンケート


  「日本貴金属時計新聞」(2014.2.1)に眼鏡記者会の主催による、
  2014年新年年賀詞交歓会での講演の内容の要約が、掲載されている。

  以下の文章の《 》内は、その記事からの引用であり、引用部の番号は、
  評者がつけたものである。

  (1) 《関連する専門職(眼科医、ORT)との連携では、(公社)日本眼鏡技術者
     協会のアンケート調査中間報告(対象=平成25年度生涯教育受講者、
     1212件、1957店舗)を紹介》

  (2) 《眼科医へ紹介する年齢は何歳が適当かという問いにも、10歳以下の
     若年者と60歳以上の高齢者が多かったとした。

     このことから、年間眼鏡購買人口を1800万人とした場合、
     14歳以下で235.8万人、65歳以上で419.4万人おり、年間400から
     500万人が眼科に来院する可能性があるとして、「資格制度を作ることで、
     眼科を訪れる消費者が増える。最適なビジョンケアが受けられるということで、
     これは消費者のメリットになる。我々は専門家との連携を深め、その意見に
     対応しなければならない。》

  (3) 《国家資格ができた場合、通販をどうするかという問いでは、
     58%が禁止するべきとしながらも、許されるべきが12.1%、分からないが、
     29.8%を占め》

     (以上は津田節哉代表幹事の説明である)


  (4) 《我々が目指すべきは、眼鏡調整(←ママ)と屈折測定が行える
     レフラクティング・オプティシャンであり、現行業務の法制化、眼科医や
     視能訓練士と連携しながら生活者に最良のQOVを提供することが
     活動の基本である。》

  (5) 《2014年度は資格制度の方向性を打ち出す最後の年》

  (6) 《資格制度は生活者のものであり、社会貢献は限りなく大きい》

     (あとの(4)と(5)と(6)は、岡本育三代表幹事代行の発言だとのこと)


  以上の発言内容について、論評をしてみる。


  眼科は患者が増えるだろうが


  
まず、(2)についてであるが、ここで言う《眼科医へ紹介する年齢》というのは、
  おそらく、お客さんが眼科処方箋を持たずして来店されて検眼を希望された
  場合に、この年齢の人であれば、自店で測定処方をせずに、まず眼科へ行って
  もらう、という意味の年齢なのであろう。

  なぜなら、自店で検眼してみて、視力が出にくいとか、
  この症状は眼科で診てもらうべきだ、などの理由で眼科へ行ってもらうのであれば、
  それは年齢にかかわらないで実施すべきことだし、実際にかなり実行されている
  ことなのだから。

  この「65歳以上なら眼鏡店では検眼せずに眼科へ行ってもらう」という方法は、
  確かに眼科は(特に開業医は)患者さんが増えて歓迎であろう。
  仮に、ある眼科で年間300人の患者が増えたら、約300万円以上の増収に
  なるだろう。

  しかしこの方法は、本当に生活者本位(患者本位)のやりかただろうか。


  私はそうは思わない。

  まず、そのようにするとお客さんの経済的負担も増える。
  その診療は保険診療でやるのだろう。
  本来ならば、特に「自分は病気ではないか」と思うような自覚症状がなければ
  健康保険はつかえず、その診断は健康診断となって、全額自費診療になるのだ
  が、眼科は、「(裸眼または矯正)視力不良」も疾患の自覚症状だと見なして
  保険で診療するだろう。

  そうなると、眼科全体の医療費が上昇することは目に見えている。
  眼科医は助かるかもしれないが、その上昇分は、結局は国民の負担になってくる
  のである。

  それと、65歳以上で、裸眼または矯正視力が思わしくない人で、
  別に眼科にかからなくいともよい人も大勢いるが、65歳以上なら皆わざわざ
  眼科へ行ってもらうというのは、利便性の点で消費者本位とは言えない。
  (ユーザーが眼鏡店に来るのは土日が多いのだが医療機関はたいてい、
  日曜日は休みで、土曜日も半ドンだ)

  また、いったん眼鏡店に来た人が眼科へ行った場合には、ほとんどの場合、
  眼鏡処方箋が発行されるであろうが、眼科で発行される処方箋の精度や
  信頼度も問題であり、それについての詳しいことは、下記を見ていただきたい。


     「ユーザー本位の眼鏡処方を推進する会」
     http://www.ggm.jp/ugs/


  なお、もし、ここで津田氏が提言しているような紹介方法が義務となった場合に、
  65歳以上の人を眼鏡店で検眼した場合、あるいは、眼鏡処方箋を持参した人の
  メガネを違う度数で作った場合には、国家資格である眼鏡士には資格剥奪と言う
  罰が与えられるであろうから、これまでのように、眼鏡処方箋は見たけれど、
  見なかったことにして、よりベターな度数でメガネを作る、というような、消費者に
  とって望ましい方策がとれなくなる。

  それが本当に「国民のQOVを高める方法」なのだろうか。


  いま眼科との密接な連携店は不利に


  また、この制度が世間に知れ渡ってきた場合には、65歳以上の人は、
  まず眼科へ行き、そこからメガネ店に行くであろうから、眼科のすぐ近くに店を
  構える眼鏡店には有利で、そうでない眼鏡店には不利な制度となるであろう。


  その理由を以下に書く。

  いまでも、医療機関が薬の処方箋を発行した場合に、患者の方から聞かれ
  ないのに、特定の薬局を推薦するということはまずないが、患者から「どこか
  近くに薬局がありますか?」と聞かれた場合には、特定の店を紹介することが多い。
  それは患者さんに対する一種の「親切」だから許容されるわけである。

  同様に、眼鏡士が国家資格になったら、患者から聞かれもしないのに眼鏡処方箋
  を発行した眼科の方から、特定のメガネ店を推薦することは禁止されるであろうが、
  患者から「どこかこの近くにメガネ店がありますか」と聞かれた場合に、特定の店を
  教えることは許容されるだろうから、である。


  それと、もしかして、引用(4)で岡本氏が言う《眼科医や視能訓練士との連携》と
  いうのは、

  眼鏡処方が上手ではない眼科へ国家資格の眼鏡士が出向いて
  眼鏡処方箋を書くことを意味するのだろうか。

  それであれば、眼科の看護師などによる眼鏡処方よりも少しはましな処方箋に
  なるかもしれないが、しかし、そんなことをしていると、眼鏡士が店をあける時間
  が増えてしまう。
  国家資格の眼鏡士は店の常駐していなくてはいけないのではなかったのでは?


  それはいけないということで、店が休みの○曜日だけ眼科に行くということに
  したら、それは眼鏡処方希望の患者さんにとって不便極りないことになってまう。
  だから、引用部(4)のなかの《連携》は、そういう連携ではないと解釈しておこう。

  いやいや、そこまで言わずとも、眼鏡士がもしも国家資格になったら、
  そんな立派な資格者が、たてまえ無料奉仕、実際には処方箋客ねらいというような、
  公明正大さを欠いた状態の、眼鏡士の医療機関への出向検眼お手伝い、など
  はありえなくなってくるだろう。

  そうなると、現在、そういう「無料」サービス」で、眼科とうまくやっているメガネ店に
  とっては、国家資格になってからのちの、この「65歳以上はまず眼科へ」という
  やりかたは、大いに不利になってしまうのではないかと私は予想するのである。

  もっとも、自店の場合は、そんなふうな眼科とのつきあいはまったくないので、
  そんな付き合いをしている店が、国家資格になってから不利になっても一向に
  構わないのだが

  いま眼科とそういう拘わり方をしている眼鏡店のかたがたは、そこまで考えて
  眼鏡士の国家資格化に賛同しておられるのかな、と、余計なことも考えてしまうのである。


  メガネ通販を許容?


  
次に(3)と(4)と(6)の引用文をあわせて、これについての論評をする。

  協会は、その公式HPにおいても、傘下の認定眼鏡士たちに、メガネ通販の弊害を
  説き、眼鏡士が通販をすることを禁じている。
  だから協会主導の眼鏡士法制資格化であれば、当然ながら、眼鏡士が通販を
  できないようなしくみにしたいはずである。

  ところが、なんか協会首脳の軸がぶれているようで、協会会員たちへのアンケート
  で、通販に対する扱いを尋ねているのである。

  これは、私が想像するに、傘下の会員から「自分らにも通販をさせてほしい。
  認定眼鏡士でない人たちが、通販で儲けているのを、我々が指をくわえて見て
  いるのはいやだ。協会は我々の商売のじゃまをしないでほしい」というような、
  不満な声が協会執行部に聞こえてきているからではなかろうか。

  そして、アンケートへの回答者のうちの1割あまりが「通販許容」ということのようだが、
  これは、眼鏡士のなかで「自分も通販をやって儲けたい」と思っている人が、
  これくらい存在するということなのだろう。

  もっとも、「通販許容派」の中には、通販は消費者にとって便利な一面もある、
  という「消費者保護(?)」の観点で、そう回答した人もいるかもしれないし、
  あるいは、自店は大手メガネ通販店の提携店なので、そこで枠を買った人が
  レンズを入れに来店してくれるから、メガネ通販は自店の売り上げアップに貢献
  している、ということから通販を「許容」する人もいるのかもしれないのだが。


  いずれにしろ、公式ホームページで傘下の認定眼鏡士たちに通販を禁じていながら、
  それをどう思うかと彼らに尋ねるということは、協会首脳には、メガネ通販についての
  確固たる信念や見解というものはないということであろう。


  それで、国家資格法制化において、メガネの通販をどうするのか、ということに
  ついては、もしも、国家資格の眼鏡士を業務独占資格とするのなら、

  A) ナニナニのことをする者は、眼鏡士でなければならない
    (眼鏡士でない者は、ナニナニをしてはいけない)

  とするか、あるいは、

  B) ナニナニのことをする施設には、最低一人の管理眼鏡士を置かねばならない。

  となるのだが、その場合の、業務内容をどうするかということにより、
  メガネの通販が法的に認められるかどうかが、必然的に決まってくるのである。

  たとえば、

  C) メガネ(フレームやレンズ)を業として販売をする者は、眼鏡士でなければならない。

    参考 : 法律において「業とする」というのは、「職業とする」だけでなく、
        反復継続の意思を持ってすることなのである)

  ということにするのなら、メガネを店で調製して販売する業者だけでなく通販業者も、
  当然それに含まれるので、眼鏡士でなければメガネの通販ができなくなる。


  枠やレンズをそのまま売るのも、レンズを削って枠に入れて売るのも、眼鏡士を
  おかない限り、違法行為となる。

  もっとも、通販のメガネ屋に対してどこかの役人がしらみつぶしに調べにいくとも
  限らないので、実際には、いわゆる「名義貸し」により、営業する通販業者が
  相当数残るのではないかとも思う。


  ただし、こういううふうに間口を広げてしまうと、「単にメガネのフレームを販売する
  だけでなんで国家資格がいるのか。
  アベノミクスの精神でもある規制緩和に逆行するのではないか」という疑問や
  抗議も当然出てくる。

  そういう抗議をさせないためにも、このような広いしばり方は無理だろ思う。


  では、

  D) メガネの玉入れ加工や販売を業としてする者は、眼鏡士でなければならない。

  とすれば、どうだろう。

  これであれば、無資格者が、レンズを枠に入れて通販で売るのは無理となるが、
  枠やレンズをそのままで加工をしないで販売する通販業者は眼鏡士でなくとも
  よいということになる。

  超高屈折率、非球面レンズ、一枚2000円!
  度数をお知らせください!

  なんていう通販が、いま以上にはやりそうだ。


  それも望ましくない、ということで、もし、

  E) メガネの販売のための屈折測定を業としてする者は、眼鏡士でなければならない。

  とすれば、ほとんどのメガネ店には眼鏡士がいなければならないが、
  逆に、100%近くの通販メガネ屋には、眼鏡士はいなくてよいことになる。


  このように、業務独占の資格を、どのような業務に対して設定するのか
  ということで、メガネの通販が違法となるかどうかが決まってくるわけで、

  国家資格の眼鏡士ができる業務の範囲を広くとりたいと思って、
  メガネの販売や加工にとどまらず、検眼までカバーしようとすると、
  逆に、それよりも少しでも狭い範囲のことをするのなら資格はいらない
  ということになってくるのであるから、無資格でできる業務の範囲は増えてしまう
  わけである。


  賢明なる津田氏や岡本氏が、そこに気がついておられないということはないと
  思うのだが・・・・・。

  それと、通販は、ある面においては消費者にとって利便性があるのだから、
  引用部(6)のように、「この資格は消費者のためである」という大義名分を言っている
  資格推進陣としては、「通販は便利だから禁止するのはおかしい」という消費者からの
  声があったら、それに抗弁して説得するのは難しいように思う。

    協 会 「でも通販は、アフターケアーの点で消費者が困るのです」

    消費者 「そんなの、どこのメガネ店にもいる国家資格の眼鏡士がやってくれたら
         いいじゃない。眼鏡士という資格は、自分の権益を守るための資格なの
         ではなくて、ユーザーのための資格なのでしょ。
         消費者のために眼鏡士どうしがお互いが協力してくれたらいいのでは?」


  遠慮なく資格剥奪を


  
(5)によると、今年度中に資格制度の方向性が決まるそうだが、
  いま、通販について、協会会員にアンケートをとっているような段階で
  本当に今年中に、方向性(この場合は、実際には「方向」のほうが適切)が
  決まるのであろうか。

  国家資格の眼鏡士を、業務独占の資格にするのであれば、
  このように、その業務範囲をどうするのか、ということが非常に難しい問題になってくる。

  すなわち、その国家資格は営業権、生存権に直結するだけに
  相当なことがないかぎり、簡単に剥奪されないものであるべきだから、
  眼鏡士を商業倫理的に取り締まるということは相当難しいことになってくるのである。


  それに対して眼鏡士を名称独占でとどめるのであれば、
  彼らに対して、商業倫理や技術者としての矜持をも厳しく求めることができるようになる。

  たとえば、通販をどうするとかいうことは、眼鏡士の組織の中の内規で、
  通販禁止を言い、それに反すれば除名、とすればよいのである。

  なぜなら、眼鏡士であった人物がそうでなくなったとしても、
  メガネに関する業務は従来どおり続けていけるのだから、別にその人物の
  営業権や生存権とは関係がないのであるから、行儀の悪い眼鏡士に対しては
  協会首脳は遠慮なく資格剥奪をすることができるはずなのだから。


  (参考)
  名称独占の国家資格の法律文に記載してある「業務」は、あくまでもその業務の
  代表例にすぎないのであり、その業務以外のことはできないというのでもないし、
  その業務を無資格者が行ってはならないというものでもないのである。


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  蛇足

  発言や書いた文章の中に「方向性」を使う人は多い。
  しかし、実際には「方向性」よりも「方向」のほうがふさわしい場合がほとんどである。

  たとえば、発言に「方向性」を使った人に対して

  「いま、方向性とおしゃいましたが、方向ではいけないのですか。
  どう違うのでしょうか」と尋ねてみたらよい。

  すぐにわかりやすい説明をしてくれる可能性は限りなくゼロに近いのである。

  「方向性」は、日本語に対する感度が研ぎ澄まされているわけではない人が、
  なんとなくかっこ良さそうな言葉だから、そのように言う(書く)というだけの
  言葉なのである。



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