SSS級認定眼鏡士に求められるもの〜【眼鏡技術者のナマの声】
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SSS級認定眼鏡士に求められるもの

                           
  2014.9.23   岡本隆博

 こういう公開質問

 
私は、最近、「眼鏡公正広告協会」 http://www.ggm.jp/gkkk/
 のサイトにおいて、メガネ店がネットでの自店の宣伝HPにおいて、
 ハイクラスの認定眼鏡士であることを強調している店に対して、公開質問をした。

 メガネ店の宣伝のHPにおいて、自店に認定眼鏡士がいることを書いておくのは
 悪いことではないが、なんか、えらく自慢げであれば、そのHPの内容を見て、
 疑問を感じる点があるとつい公開質問を書いてしまうのである。(^^)

 たとえば、名古屋市のメガネアベール店の場合は、
 SSS級の認定眼鏡士がいる店であることを派手に謳っているのであるが、
 写真で紹介されている検眼の方法が最悪の組みあわせであったという
 望ましくない内容であった。


 SSS級とはどんな級?

 メガネ業界には、公益社団法人の日本眼鏡技術者協会が認めた認定眼鏡士と
 民間資格があり、その最高クラスがSSS級である。

 この級に合格するには、試験を受けてそれにパスしないといけないのだが、
 実技試験はなく、筆記試験のみである。

 努力の末にSSSの試験に合格した人には失礼な物言いかもしれないが、
 SSSというのは、いわば、眼とメガネの物知り博士、あるいは、眼とメガネの薀蓄大王、
 みたいなもので、試験問題の出題者が執筆している問題集を勉強すれば、
 まあ、合格はさほど難しくはないのでは?と私は思っている。

 しかし、本当の最高クラスの眼鏡士に対しては、該博な専門知識(それがないよりも
 あるほうがベターではなるが)よりも、高度な検眼技術と的確なフィッテング能力で
 もって、快適なメガネをユーザーに提供できる現実的な実務能力がもっとも要求される
 はずである。

 だから、協会が、最高クラスの眼鏡士はこの人です!
 ということをユーザーに示したいのであれば、

 検眼やフィッティングの厳しい実技テストもしたほうが良い、というか、それなしで
 筆記試験だけで最高クラスの眼鏡士を認定するのは、片手落ちだと私は言いたい
 のである。

 http://www.megane-avail.com/skill/(2014.9.21現在)によると、
 平成22年度ですでに391名の人がSSS級になっているそうだが、
 いまならもっと多いだろう。

 それはともかくとして、ある認定眼鏡士がSSS級であることは、その人が勉強意欲が
 ある人であることには相違ないのであろうが、実際には、SSS級までの資格保有と
 いうことと、良いメガネを作る腕前とは、あまり関係がなく、(まったく無関係、とまでは
 言わない) 良いメガネを作るための実技や必須の知識であればSS級で十分、
 だと私は思っている。

 もっとも、SS級の実技テストの合格レベルはさほど高いものではないと聞いているし、
 SS級の人の中にもピンからキリまでおられるので「SS級の人であれば、必ず良い
 メガネを作れる」ということではないし、名人クラスの眼鏡技術者でも常に誰にでも
 十分満足がいくメガネを提供できるとは限らない・・・・ことは、名医なら誰でも治せる、
 とは限らないのと同じことである。


 まずい設問がいろいろ

 いま、SSやSSSの筆記試験は、医師の国家試験のような5択問題で、その問題例
 が問題集として協会から発売されている。

 http://www.megane-joa.or.jp/syutoku/26ninteisiken.html(2014.9.22現在)

 この問題集の前身とも言える『認定眼鏡士AAA級・SS級 認定試験アウトライン、
 問題集』(2004発行)というのを以前に私は入手し、その中のいろんな設問に
 対して疑問点を述べた。

 それは「日本眼鏡技術研究会雑誌」 http://www.ggm.jp/ngk/news/examination.html
 の、第64号(平成16年11月発行)から第67号(平成17年11月発行)にわたって
 4回連載されたのだが、その問題集の中から合計28の設問に対して、疑問点を
 書いている。

 それはほとんどの場合、設問の内容や文章表現のまずさにより、正解は、一つとは
 限定できないのではないか、というものである。

 たとえば、65号に載せた下記の設問を見てみよう。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

   5.斜位測定法について正しいのはどれか。

     a.斜位測定ではテストフレームのPDを正確にしなくても問題はない。

     b.斜位測定で抑制は発見できない。

     c.斜位測定は暗室で行なわなければならない。

     d.測定距離にかかわらず人の斜位量は一定である。

     e.斜位測定は、何らかの方法で融像を妨げて行う。

                                          解答:b
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 これについての解説は書かれていない。

 c.やd.が正しくないのは明白であるが、では、a.もe.も、明らかに違って
 いるのかな?ホントにそうかな?

 たとえば、その眼が正視であろうがなかろうが、SやCのレンズを装用せずに斜位を
 測るのなら、a.も成立する。

 だから、a.を誤りとしたいのであれば、「屈折度数を矯正するレンズを装用した場合の
 斜位測定では……」と校正しなければならない。

 それでもなお、たとえば、左右ともに-0.25Dの矯正レンズで斜位を測定するので
 あれば、PD60の人にPD64の仮枠で測定しても特に支障はないのであるから
 問題文をそのように校正をしても、十分ではない。

 それに、PD76の人を測るのに、テスト枠はPD72までしかない、という場合であれば、
 72の仮枠で、装用する球面度数に応じて、ベイスインかベイスアウトのプリズムを入れて、
 擬似的にPDのつじつまあわせをするということもあるが、そういうことをした場合には
 このa.の記述は当てはまるのかどうか、ということもわかりにくい。

 また、被検者のPDが63のところを64のPDを持つテスト枠を使う、というのなら
 「正確」なのか「不正確なのか」、というのも微妙なところである。

 また、e.は、どちらともいえない。
 なぜならたとえば、偏光視標の十字テストでは、中心融像はさせないが周辺融像は有り、
 の状態での斜位測定となるからである。

 また、出題者が正解としたb.も、一概に正しいとは言い切れない。
 たとえば、偏光視標を見せて片方の眼で見えるべき部分がまったく消失していた場合、
 そのあとのバゴリーニなどの抑制検査の結果、「やはり片眼抑制だ」となる場合もあるし、
 「いや、片方の眼は視力は出にくいが抑制はしていない」ということになる場合もある。

 だから、b.を正解としたいのなら下記のような文に校正しないといけない。

 「抑制は斜位測定だけでは発見できない」

 こうするか、逆に「斜位測定だけでも抑制を見つけることができる」

 として、それを誤りとするかの、どちらかである。

 この設問の出題者は、そういう細かいことまでは考えていなくておそらくアバウトに
 この文面でこの出題をしたのであろう。


 出題者はどんな人?

 
このように検討すると、この種の問題においては、出題文から読み取れる出題者の
 思考の厳密さ、知識の深さや広さ、論理的な日本語能力などに疑問符をつけたくなる
 ものがままあり、その件について詳しく知っている受験者で、日本語感覚に鋭敏な
 人間ほど、答えるのに迷いが出る場合が多くなってくるものだということが言える。

 また出題者に対しては、その分野における詳しい知識だけではなく、精緻な論理能力と、
 日本語表現能力が求められるのだが、この問題集を検討した私には出題者に、
 その能力の欠如を感じざるをえない問題が散見されたのである。

 では、すべての設問が、内容的に、および文章的に紛らわしくない問題文となるため
 には、どういう方策が採られるべきなのか。

 それは、一度できた問題原稿を、すべての出題者に回覧してみて、他の出題者が、
 疑問を感じた点について遠慮なく問い糾す、という方法しかないと思う。

 しかし、何らかの理由で、そういうことはしない、というのであれば、いつまでたっても、
 紛らわしくて困る設問、はなくならないだろう。

 なぜなら、上で例に挙げた設問でも、出題者はいまだに自分の出した問題の不備な
 点を自覚していないと思うから。

 なお、私は以前に下記の問題を作ったが正解を考えるにあたって紛らわしさが
 生じないように最大限の注意を払ったつもりである。

 http://www.ggm.jp/ngk/news/examination.html

 もしも、誰かが私に対して「ここの問題は、これこれの理由でこの正解はおかしい」と
 いう抗議をしてきたとしてもそれに対して負けない反論を出せる、と言うつもりで
 私はこの問題を作ったのだが、

 SSやSSSの筆記試験の問題のなかのいくつかの設問に対して、受験者の誰かが
 疑問を呈上した場合に、それを公表し、それに対する反論なり釈明なりも公表する
 というだけの覚悟を持って、問題を作っている出題者のかたは、おられるのであろうか。

 たとえば、SSやSSSの試験問題の最後に下記のようなただし書きをつければ、
 出題者はいまよりも、もっと真剣な緊張感を持って、注意深く、脳に汗をかきながら
 問題文を作るのではないだろうか。

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 この分野の問題は、●田●夫が作製しました。
 疑問があれば、あなたの氏名を明記してその疑問を協会へお寄せください。
 それを本協会の公式HPに掲載し、出題者がその疑問への回答をします。

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 しかし、現実にはそういう措置はとられていないし、出題者間における事前回覧査読
 と意見交換の方策も採られていないようだから、各出題者は比較的気楽に出題ができる
 ……のであろう。

 もっとも、詳しく知っている人間ほど正解を出すのに戸惑う問題というのは、認定眼鏡士
 の試験問題に限らず医師の国家試験でも、どこでも、けっこうあるのだが……。


                          (了)



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