[ML談義] 本物の「日本製」とは?

「日本製」の定義は?

ON
最近、小売店様から原産国表示について聞かれることがあります。
主に、製造のどの工程を日本で行なえば「made in Japan」なのか?ということです。
皆さんは、ご存知でしょうか。

眼鏡公正取引協議会の「原産国表示Q&A」(眼鏡類の表示に関する公正競争規約等の一部変更に関するQ&A)と言う資料があります。
あと、福井県眼鏡協会に聞いた見解からすると、プラスチックフレームの場合は、切削、成形、丁番埋め込み等の加工を行なった場合で、素材が他国の物でもかまいません。

メタルフレームの場合、各部品をロー付け等の接合によって組み立てた場合で、部品、表面処理が他国でもかまいません。
極端な場合、部品を中国で製造/日本でロー付け組み立て/中国で研磨、メッキ処理。これでも、「made in Japan」になってしまいます。

ワンプライスショップの要望でしょうか、現在、A社が自社中国工場で製造した部品を使用し、国内で大量に「made in Japan」を製造しようとしていますが、そのフレームは部品の精度、特に丁番が悪いと言われています。
不況の影響も有り、国内メーカーはもとより、国内部品メーカーも週休3日でも仕事が無いような状態です。
皆さん、本物の「made in Japan」をよろしくお願いします。

岡本
私は、メガネに形にできあがった国がどこなのかということで原産国が決まる、と聞いていました。
その考え方でいくと、ローつけがあってもなくてもフチナシメガネだったら、レンズとブリッジと腕を外国で作って、それを日本で組み合わせたら「日本製」になるのでしょうね。
また、あくまでもロー付けをどこでしたかということで原産国が決まるのであれば、ロー付けなしの部品でできているフチナシだったら、やはりレンズとブリッジと腕を外国で作ってそれを日本で組み合わせたら「日本製」になるのでしょうね。

アジア製には、たしかに、めっき、丁番、レンズ締めネジ部、がおかしいのがあります。
【素材がどこ製というのは別にしても、部品としてできあがっているものが外国製で、それをくっつけた所が日本なら「日本製」というのはおかしいですね。】a

それで、ONさんが引用された定義も厳密さに欠ける定義であり、たとえば、プラスチック枠の場合、「切削、成形、丁番埋め込み、のうちのどれか一つでもした場合」なのか、あるいは「少なくともどれとどれをした場合」なのか、あるいは「すべてをした場合」なのかがわかりません。

もっとも、切削と成型は、通常はどちらかでしょうから、「すべて」ということはないと思いますが。また、メタル枠の場合は、「ロー付け等の接合」ということだけれど、小田
幸のチタン一山ナイロール枠のように接合部分がない枠ならどうなるのかということが、不明確となる定義ですね。

ON
規約には「メタルフレームにあっては、フロントについては、フロントを構成する各部品をろう付け等の接合によって組み立てこと。また、テンプルについては、テンプルを構成する各部品をろう付け等の接合によって組み立てこと。「等」となっていますから、ロー付け無し縁なしは、日本で最後の組立だけやれば日本製になるのかもしれませんね。

【 】aについてはほんとにおかしいと思うんですけど。 現在でも「made in Japan」の中には、A社等の中国工場で製造された部品を使用した物が結構あります。
発注した問屋等が知らない場合もありそうです。当社の「made in Japan」は部品までさかのぼってチェックしています。

岡本
それでONさんは「本物の日本製」をどう定義されますか?

ON
【「本物の日本製」とは、部品製造から仕上げまで一貫して国内で行われたものだと私は思います。
貿易向けの基準で製造された物は、品質的に良くないので除外したい所です。】b
なお、プラスチックフレームの場合、規約には「プラスチックフレームにあっては、フロントについては、切削加工、打ち抜き加工、成型加工、丁番等の埋め込み加工をすること。また、テンプルについては、切削加工、打ち抜き加工、成型加工を経て形作り、丁番や芯材等の埋め込み加工をすること」となっています。
バレル研磨やバフ研磨は中国でも良いようにも受け取れます。

あいまいな文章表現

岡本
では、フロントで、たとえば丁番等の埋め込み加工のみを日本でやったらどうなるのでしょう。
テンプルで、たとえば切削を外国でやって、芯材の埋め込みを外国でやって丁番埋め込みを日本でやったらどうなるのでしょう。
要するに私が言いたいのは、この定義において並列的に書かれている作業に関して、そのすべてが行なわれたとき、なのか、どれかでも行われたときなのか、あるいは、少なくともどれとどれが行われたとき……なのかが曖昧でわからないということです。この定義を作った人の論理性の欠如が伺えます。

ON
実際の製造工程を考え、ここからここまでは一貫して行うだろうと決めつけて作った感じですね。
中国でフロント、テンプルを切削成型、日本で丁番埋め込み、芯の打ち込み後、中国で研磨仕上げ、これが一番安く出来る日本製……?

岡本
あるいは、勘ぐれば、抜け道を造るためにあえてこういう解釈に幅がある表現にしたのかもしれません。
法律の合間をかいくぐって良からぬことをするのを脱法行為と言います。
メタル枠でロー付けだけを日本でやって「日本製」とするのも、一種の脱法行為と言えると思います。
それで、ONさんのおっしゃった【 】b ですが、国内一貫生産によるものでも、輸出向け規準のものと、そうでないものとを区別するための規準作りができるのであれば、「以下の規準で、部品製造から組み立て仕上げまでのすべての作業が日本でなされたもを『真性日本製』と称する。規準 ………(ここに規準を入れる)」ということを、この規約に付け加えてもよいと思いますね。

ON
そうですね。
THE291の場合、品質面は何となくこれに近かったと思いますが販売の現状はご存知の通りです。

(岡本)
この対談が終わってから私は下記のように考えた。
そもそも、部品製造、組立、仕上げを同一国でやらない場合が、もとから多々あるような
商品について、原産国表示をただ一国のみですますための定義などを作ろうとすること、
それ自体に無理がある。
だから、今回ONさんがおっしゃったような脱法によるずるい表示をしようという製造業者が出てくるわけである。

原産国表示は次のようなことにすればよいと思う。
素材がどこのものであるかは表示しないでよいが、部品製造をした国、ロー付けなどにより組み立てた国、メッキや磨きなどの表面仕上げをした国が、単一なのであれば、「made in Japan」などとその国の名前のみで表示してよいが、各工程の作業が複数の国で行われた場合には、その国名を、工程順にすべて書くこと。
たとえば、made in Koria-Japn-Chinaというふうに。
原則としては、部品製造国、組立国、仕上げ国、の順で書くのがよい。

投稿日:2020年10月17日 更新日:

執筆者:

新しい記事はありません

本会の元代表が全国の眼
鏡技術者向けの技術教本
を発刊しております
岡本隆博著

(近視矯正手術の後遺症対策研究会HPより)

▲ 近視手術をお考えのかたへ
安全性や後遺症についての
資料を集めたサイトです。

PAGE TOP