[ML談義] 「ムーブの疑問」への疑問

西村氏が登場してメガネを診断

岡本
「眼鏡新聞」(2008.11.25)から引用します

(引用はじめ)
11月19日夕、大阪ABC朝日放送「ムーブの疑問」でメガネが取りあげられた(10分弱)。

番組のタイトル は「安心のメガネ選び術」。
50代の女性が老眼と視力の低下により初めてメガネを作ったが合わないので病院で診てもらうと「左右のレンズでランクが違う。
もっと、ちゃんとした店で作ってもらった方が……」と言われた。

そこで作ったメガネ店に行き聞いてみると「そんなはずはない」と言われたので、番組にメールで不満を送信。テレビ局が取りあげたというもの。

番組では、大阪市北区の西村眼鏡店・西村日眼連会長代行の店を取材。
女性に来店してもらい、西村会長代行が処方箋とレンズを比較した結果、グレードの違うレンズが入っているわけではなく、価格が違うレンズではないことが判明。 レンズ度数が弱いことで見えにくいと説明し、理解が得られた。
(引用おわり)

私はこの番組を見ていなかったのですが、この話は下記のどちらなのでしょうか。

1)そのメガネは「ランクが違うレンズウンヌン」と言った病院の眼科で処方されたもの。

2)そのメガネは「そんなはずはない」と言ったメガネ店で処方も調製もしたもの。

ご存じのかたがおられましたら、教えていただけないでしょうか。

保田
10月の中頃だと思いますが、この番組の朝日放送の担当者から電話で問い合せがありました。
その説明では、どこかの眼科の処方箋で作ったメガネの調子が悪く、その眼科でメガネを調べてもらったら、「そのレンズは左右でグレードの違うレンズを使っている」のが原因だと言わた。
そして、作った眼鏡店に持って行ったら、「そんなはずはない」と言われて困っている人から番組に相談のメールがあった。

はたしてどちらの言っていることが、正しいのでしょうか?
そちらの店(当店)では、検査をしてくれるのでしょうか?……というような内容だったと思います。

たまたま京都在住のかただったので、当店に問い合わせがあったのでしょう。
その話を聞いて、眼科もその眼鏡店も「どっちもどっちですね!レンズのグレードの問題よりも処方の問題でしょう」と答えておきました。

そして「そのかたがお困りなら、もちろん検査は致しますが番組向けのパフォーマンスを期待されているならお断りです」と申し上げました。 (テレビ嫌いなもので……)
これでは、番組になりませんよね。(^_^;)

 

なぜこの話に認定眼鏡士が?

岡本
へえ~、この話に保田さんも一枚噛んでおられたのですか……。
このあとで西村氏は認定眼鏡士の宣伝をしておられますが、少なくともこの話においては、眼科の眼科処方のとおりにちゃんと作ってあったのですから、認定眼鏡士ウンヌンは関係ありませんね。

この話ならむしろ、「眼科で測ってもらうとこんなことになりかねないから、眼科では眼に病気があるかどうかだけを診てもらって、メガネの度数は眼鏡店で決めたほうが……」という教訓になるのが自然だと思いますが、西村さんは、そんなことは公には言わないでしょう。(西村さんの店は眼科処方による調製が多い店ですが、以前西村さんは私に「度数は眼科で決めずにこちらにまかせてくれたらいいのに」とこぼしておられました)

この番組ではどういう説明がされたのかというと、

(引用はじめ)
番組では、メガネは使用目的に合ったレンズ選定や一人ひとりのフレーム調製など、専門的で複雑な技術が必要だと解説し、一般消費者には技術レベルの判断が難しいとして、認定眼鏡士制度を紹介。
(引用終わり)

この文中の「フレーム調製」はこの記事を書いた出版社の人間が「調製」と「調整」の区別がわかっていないことからくるもので、「フレーム調製」はおかしな言葉であり、文脈からしてここは当然ながら「フレーム調整」でしょう。

そうであれば、ここには、眼鏡処方技術についての眼科と眼鏡店の比較論的なことはまったく含まれておらず、ただただ眼科を刺激しないために、レンズ選びだの、フレーム調整だのと西村氏が言ったのだと解釈せざるを得ません。

そうではなく、もし 「眼科処方ではこのような結果になることがあるので認定眼鏡士の店で測ってもらえばよい」とでも西村氏が言ったのであれば、「よく言った!」とほめてやりたいのですが、それはまあ、無理でしょう。

それでこのユーザーは眼科処方のメガネで見えにくいと思ったときに、まずメガネ店に相談に行って、そこで「ウチは眼科の処方どおりに作っただけ」と言われたので眼科へ行ったのか、あるいは、メガネ屋へは行かずに眼科へ行ったのか、おそらくは前者だと思うのですが、いずれにしても、このメガネ屋が、「見えにくい」という訴えや、眼科からのグレードが違うウンヌン」という見解をそのお客さんから聞いたときに、自店で測ってみて、なぜ見えにくいのかを探ろうとしなかったことにも問題なしとは言えませんが、それ以上にこの眼科はひどいですね。

自分の不手際を他人のせいにするなんて! これではそのメガネ店に対する営業妨害だとも言えます。

それで、保田さんが、その番組に出られなかったのは、惜しいことをしました。
テレビで日眼研とネットチェーンの宣伝をしていただいたらよかったと思います。
う~ん、残念!

それで、作り直しのレンズの費用を誰が負担したのかということが、眼鏡新聞には書かれていません。
西村眼鏡店が特別サービスをしたのかどうかはわかりません(テレビで自店の宣伝もできたでしょうから、そのくらいのサービスをしてもよいとは思います)が、おそらくテレビでもそこまではやらなかったのでしょう。
でも、そこが肝心なところなんですけどね。

今回、テレビ局と西村氏がその眼科へ行って処方責任を追及すればおもしろかったのですが、西村氏は、2か所の大学病院と仲良くしているかたですから、どこの眼科へでも、文句をつけに行くということはできないでしょう。

それでもし、保田さんが、今回の西村氏の役割を演じておられたらどうされましたでしょう。 眼科へ乗り込んで行かれたでしょうか。
そうしたら眼科はどう言うか、そこが見所ですね。

眼科
「眼鏡処方は医療である。医療は結果責任ではなく、行為責任である。
だから結果が思わしくなくとも眼科に責任はない。この処方をするときに、患者さんはこの度数で近くのものを見て『これで見えます』と言ったのだから、眼科には責任はありません」

メガネ屋 「でも、レンズのグレードウンヌンと言って、メガネ屋にヌレギヌを着せたのは、営業妨害という明白な不法行為ですよ」

眼科   「う……」

 

苦しまぎれにメガネ屋のせいに

保田
今度もしテレビ出演の機会があれば、なるべく受けるように心がけます。(^^ゞ
それで、このかたがもし当店にこられていたら、作り直しの場合の説明をしてからの話になったと思います。

そして、もし私がこの番組に出ていたとしても、今回のケースでは、眼科へ乗り込むまではしなかったでしょうけど、当店で作成したメガネに対してクレームを付けられたのなら、場合によっては、そうするかもわかりません。
私の場合は、眼科に何のしがらみもありませんので……。

岡本
この眼科でメガネ屋に対する営業妨害的なことを言った人が、医師なのか検査員なのかはわかりませんが、どちらにしても、根っからの悪人ではないでしょう。

そのメガネで見えにくいことの原因は自分の処方の手落ちだと言ってしまえば、レンズ代を弁償してくれないのか、と思われると困るし、そうかと言って、「あんた、あのときに、これでよく見えると言ったじゃないの!」 とか 「眼鏡処方は医療です。医療は結果責任を問われません。私は求めに応じて検査をして処方箋を発行することにより、医療従事者の責務を果たしています」 などと開き直るようなことは、経営的に大事な「患者様」には言いにくい、ということで、苦し紛れにその場にはいないメガネ屋のせいにしたわけです。

それで、なんでこういうことになるかと言うと、それは当然、いつも私が言っているように、眼科でやるべき理由がない眼鏡処方を眼科でやるからです。

眼科と眼鏡店のごちゃごちゃの原因はすべてここに帰結します。
眼科の眼鏡処方は、メガネ屋とは違って、その結果もしうまくいかなかった場合に処方者が自分で後始末ができません。

もっとも、眼科での眼鏡処方がすべて医療であるのなら、その医療の行為が普通の水準で行われていれば、結果を患者がどう思うかということは、原理的というか、少なくとも法的には関係がないから、法的には知らぬ顔でもよいわけで、そういうあと始末はいらないから、あと始末ができなくても良いのだとも言えますが、それでは患者さんは納得できないでしょう。

一方、メガネ屋の場合には、商売として眼鏡の処方や調製をするので、その結果に対して文句が来た場合には、もっと良さそうな度数に無料でレンズ入れ換えるとか、最悪は返品を受け取るとかすることによって一応は治めることができますが、眼科はそんなことをできるだけの報酬をメガネの処方によって得ていないのですから、普通の眼鏡処方を眼科がやることが、そもそもおかしいのです。

眼科が「この眼に対しては眼科で眼鏡処方する必要はない。病気ではない単なる屈折異常とか老眼に対する処置は医療にはならないから」ということで、その眼に対しては眼科では眼鏡処方をしなければ良いのです。

たとえば、眼科が上記の私の主張通りに、眼鏡処方をメガネ店に委ねるのなら、今回の話では、患者さんから 「このメガネでは見えにくい」 という相談を受けたのであれば、そのメガネを調べて、屈折検査もしてみて 「度数がゆる過ぎますね。メガネ店でもう一度測ってもらってください」 と言って、メガネ店にその患者さんを返したらそれでおしまいなのですが、そうでなくて今後も同じように眼科で処方をしていたら、もしそれでもうまくいかなかった場合には、また 「グレードウンヌン」 と言わざるをえなくなるかもしれませんよね。

前にネットで私と議論した(会誌にも載せました)HARI医師(さる地方都市の病院の眼科に勤務)は、私との議論以後、そういう普通の眼鏡処方は眼科ではしないそうです。

「既成概念から脱却して楽になった」とおっしゃっています。
(そのことに関する私とHARI医師の話は、本会会誌今号に載せています)

 

差別化できる絶好のチャンス

保田
自店では通常、処方箋持参でメガネをお求めに来られるかたには、まず、どのような目的でメガネをお求めになるのか、また、その処方箋の作成に当たって、ご本人の意向をきちんと伝えて、そのような処方になっているのかどうかを、まず確認させていただきます。

そうすると、遠方用か近方用かの区別ぐらいで、ほとんどおまかせ状態で測ってもらわれたかたばかりだということがわかります。

当然ながら、ご本人は通常のメガネを作成するためのものなのか、何らかの治療目的の処方なのかなどという意識はありません。(ほとんどが、通常のメガネのための処方ですが)

そして、処方箋の確認のため、当店での検査を致しますが、そうすると様々な処方の問題点が見つかることが多いです。

当方としては、その相違点についてひとつひとつ説明をする手間が増えますが、多くの場合、当店での処方どおりにお作りすることになります。

当店では、できるだけ最終メーカーである当店の責任においてお作りしたいと思っておりますので、今回のような眼科処方に関するトラブルは最近ではほとんどなくなりました。

岡本
こういう対応は当店と、ほとんど同じですネ。
眼科の処方箋をご持参の場合、(小さいお子さんは別ですが)そこでひとつの「差別化」ができるのです。(^_^)

たいていの店は、眼科処方箋を持ってこられたお客さんには、「手間が省けて楽だ」 とか 「ヘタに度数をいじるとあとでばれたらやばい」 と思って、ごちゃごちゃ言わずにそのまま作るでしょう。

それで、もし、うまくいかない場合には、

1)自店で測って無料でより良い度数に入れ替えてあげるつもり。
2)眼科へ行ってくださいとつっぱねるつもり。
3)そこまでは考えていない。とにかく楽して目先の売上げが立てばよい。

上記の3つのうちのどれかだと思います。

ですので、この3つのどれでもない、別の対応をすれば、それで立派な差別化になり、お客さんに「この店へ来てよかった」と思ってもらえるわけです。

たとえば、私の場合には、下記のことを申し上げます。

(1)眼科は眼の病気の診療が本業で、眼鏡処方は得手ではない場合がほとんどであること。
(2)眼科処方箋のとおりに作ってうまく見えなくても、当店は責任はとれない旨
(3)それで眼科へ苦情を言いに行かれて、再度処方箋が発行されても当店では無料で入れ直しはしないということ
(4)再度処方のとおりに作っても、またうまくいかないかもしれないこと。
(5)当店で測って作れば、その眼鏡の使用目的に添った使い勝手の良いメガネができる可能性が高いということ

そうすると、ほとんどのかたは「ではここで測ってください」とおしゃいます。
それで、検査のときには、当然ですが、眼科では行なわれていない偏光視標による両眼開放屈折検査や近見RGなどをして、その説明もして、なるほどと思っていただくわけです。

結果として、当店でお客さまが選ばれた度数が眼科の処方箋の度数とまったく同じになることは非常に少ないです。(皆無ではありません)

保田
この(1)~(5)あたりの説明は私も必ずします。そして、実際に検査をしてみると、
眼科での検査との違いを実感していただけます。(^_^)
いかに、眼科の検査が”テキトー”なものかがよくわかっていただけます。

まっ、こちらは眼鏡処方を専門としているのですから、こういうふうになるのが当然だとも言えるわけですが……。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

この談義があって、数日後に、下記のことがわかりました。

(1)保田氏がテレビ局から聞いた「メガネの処方は眼科でなされた」というのは、実は違っていて、その最初の処方は大手チェーン店のメガネ店で行われていた。

保田氏に電話を掛けたテレビ局の人間は故意に虚偽のことを伝えたもよう。

(2)今回の相談者に対するその店の対応は非常にまずく、業界の恥になるようなレベルのものであった。

(3)業界誌の記事を読む限りにおいては、そのメガネ店はヌレギヌを着せられた被害者で、眼科はヌレギヌを着せた悪者、ということになりそうだが事実は逆であり、眼科は相談を受けて検査をしたこの人に対してマトモな処方箋を書いて渡している。

上記のうち、少なくとも(1)と(2)は、テレビ番組では言われているにもかかわらず、それを眼鏡新聞や月刊「眼鏡」で書かなかった。

眼鏡光学出版社は、業界の報道機関としての存在意義を問われてもしかたがない。

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詳しくは、近日中に、「ムーブへの疑問」への疑問 続編として、このサイトに掲載します。

投稿日:2020年10月18日 更新日:

執筆者:

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