コンタクトレンズのユーザーへの供給方法についての私の意見

                         賞月堂・一宮店 野々村郁夫

私が眼鏡・CL業界にお世話になってもう30余年です。

新人だった頃からみたらこの業界にも他業界同様に色々な革新めいたことが起きてきました。

ただ残念なことに革新と思われる変化の多くは、使い捨てレンズの登場で引き金を引かれた、価格破壊が中心であって、ユーザーの便宜性や技術の向上には結びついていません。
またユーザーのCLに対する意識構造も低下をしています。

問われるのは
真にこの業界が『ユーザー本位の業界』であったのか? なのです。

CL業界はむしろ 『ユーザー不在の業界』であったと思う。
眼鏡のユーザーはそれなりに選択の自由があったのでこれでもまだ『ユーザー本位』に近いと思います。

メガネは眼科で検診を受けなくてもお近くの眼鏡屋で検査を受けて気軽に作れます。
ただその際に疾病による視力低下なのか、屈折による低下なのかは判らなくてもです。

眼科で検診を受けずとも眼鏡を作れば良いのかの判定は多くの眼鏡屋さんでは出来ないかもしれません。
でも生命の危険や失明の危機に陥ることはまずありません。

そしてある一定のレベル以上(認定眼鏡士)のお店ならば、検査中に異常を感じれば眼科への受診を薦めてくれるでしょう。

 

「認定眼鏡士」 これは 武士道につながる 「士」 が付いてます。
彼らは専門知識に優れており、常に知識や技術を高めてゆこうとする上昇志向が強い。

私利私欲よりもユーザーの目の健康に役立つ眼鏡の提供を常に心がけてゆくという志向があります。

また提供した眼鏡に不具合が出た場合も言い訳することなく、無料で原因を突き詰めて再作成に挑みます。

完成した眼鏡でよく見えることにユーザーと共に感動するのもこれらの認定眼鏡士の多くの姿です。

中には大型チェーンの社員はノルマに追われて高いメガネを売ることだけに専念される人もいますが、こうした人たちはこの認定眼鏡士の会費を納めることも嫌って資格を得ようとしていません。

認定眼鏡士の検査は眼科よりも眼鏡処方が上手です。

誤解の無い様に先に説明させていただきます。
眼科の視力検査は矯正視力に主眼を置いています。

つまり見えるか見えないかがポイントであって、その屈折度数にはあまり興味が無いのです。

視力が出ないと、どこに問題があるのか?

網膜なのか水晶体か これを探します。
水晶体の白濁だけなら白内障の手術を施して視力の回復を目差すはずです。
故に屈折度数自体には興味が薄く検査自体には力点がありません。

専門眼科医師はその治療効果というか、手術でもっておおきな喜びを患者さんに提供することで眼科としての口コミ効果を得ますが、メガネの処方が上手だからといって患者が増えることはまず、ありません。

メガネの処方箋の発行は面倒であり、かつ儲けの少ない技術提供です。
しかもその処方によってクレームが出ることのリスクも背負うわけです。

だから当院でも併設メガネ店で作る院内処方だと安心ですが、他所のメガネ屋で作られる院外処方箋だと緊張してしまいます。

 

眼科も人手不足

新手の処方箋が出回っています。

「この人には視力低下を引き起こす疾病はありません。」

メガネを掛ければ視力は出ます。
メガネ屋サンでメガネを作ってもらってOKです。
メガネ屋さんは患者さんに誠意を持って快適なメガネを作るようにしてください。

すべての眼科でこのような健康診断的な処方箋をきるだけだったらどんなに快適でしょう。

あとあと起こりうるリスクからは開放されるでしょう。

経験豊富な視能訓練士を雇用する必要もないしいつ退職されるかびくびくすることもありません。

 

こうしたことがコンタクトレンズでは何故出来ないのでしょう。

まさに、『ユーザー不在の業界はコンタクト業界』です。

ユーザーがコンタクトを購入するためには眼科医師の診療が必要である。 ということが、良かれ・悪かれここが業界に関係する立場の人すべての問題となっている。

特に医師自らが装用指導をするべし、なんてことになっているそうな・・・

もう笑うだけです。

医師自らがコンタクトレンズの装用指導を行って販売をしている施設が皆無だとは言いませんが、私自身はそうした施設があるとは知りません。

最難関の医師免許を取得されたエリートがコンタクトの処方をするなんて間尺に合いません。

 

誰が検査するのが望ましいのか

さらにキーポイントとして、コンタクトユーザーは1500万人も存在している。

このユーザーが、年に2回程度の眼科受診が望ましいとすると、年間3000万回の受診が発生する。

眼科医総数は1万人程度だから一人につき年間3000人の配分です。
眼科医の中には手術中心の医療でCLは診ない、もっと言えば診たくない先生も多い。
CL検診が面倒だと言う医師が半分程度としてCLを診る医師に負担が掛かります。

CL検診でも歓迎という医師が5000人として一人当たり年間6000人となり月500名となります。 月20日診察をするとして、1日25名。 通常の患者さんに混じってです。

CL経験者だと一人当たりの時間は20分で、新規だと少なくとも90分は掛かります。
なかなか装用できないという気の弱いお客様だと3時間4時間も掛かります。

 

先ほど述べたように、医師自らがコンタクトの検査をするなんて聞いたこともありません
ので、全く教育がされていない眼科スタッフが急遽検査に廻されることもあります。

現実の話として、コンタクト検査員が急に退職されたことから、昨日まで受付にいたスタッフが検査に廻されて見よう見まねで働いていたが、ノイローゼになったなんて話も届いてきます。

さらにそこで購入されたとするならレンズの売買差益があるので検査スタッフの人件費がある程度計算できますが、

「なに処方箋の発行だ!」

となると、リスクを背負わされてのほとんどただ働きです。

結局こういうことです。

医師ではなく、コンタクト管理責任者の責任のもと検査販売するような仕組みに変えるべきであろう。

認定眼科専門医はCLの検査から外して医療本来の業務に専念してほしい。

CLで創めて障害が発生した時点で本当の患者様です。

またCL新患においてのCL適正検査だけは必要です。
CLを装用しても問題はない・・という前眼部チェックをしてCL装用可の証明だけです。
面倒なCLの処方箋や装用指導は一切しません。

眼科医も安い対価しかないCL処方箋一枚のために、将来発生するかも知れないクレームを背負う覚悟はありません。
この始めての人におけるCL適正検査は保険適応外とするのが望ましいのです。

CL検査の歓迎施設は値ごろ価格として受け入れを表明する。
受け入れ拒否施設は高額な検査料金を明示して暗に拒否をすればユーザーは振り分けられるでしょう。

健康組合が赤字体質なのに・・・
CL販売がための眼科受診は、健康診断的要素がほとんどである。

これは健康保険の目的外使用であると断言したい。
コンタクト使用における眼疾患としての診療はこれとは別物です。念のため。

ユーザーはCL購入の利便性を求めています。
同時にレンズ代金以外の支払いはしたくありません。
同時に国も・健保組合もです。

健康保険料を天引きされている私でもある組合員もそう望みます。

コンタクト販売に眼科医が介在することから販売会社がアルバイト医師を雇用したり名義貸しなどによって健康保険のシステムを食い尽くしてきたことは周知の事実です。

一時、保険適応を外すとか大山鳴動したが、少しだけ不良コンタクト眼科の縮小になっただけで根本的解決になっていない。

CLが高度管理医療機器に認定されてということで、販売管理者の更新料という新しい利権をどこかの天下り企業が得ただけのようであると危惧する。

 

現在の矛盾

医療費を下げたいのにCL適正診断は健康診断なのに保険適応している。

CL装着指導は医師自身がするという非現実的な問題をそのままとしている。

CL検査をしたくない医師としたい医師がいる。 棲み分けが必要である。

ディスポCLは3ヶ月検診だと言うことになると、これは極めて馬鹿げた話で健康保険システムを食い尽くす暴挙であり、しかも通常眼科の診療体制を破壊し急を要する患者様の邪魔になりかけない考えです。

まさにCLの販売を通販業界に追いやることでしかありえないことであると思う。

コンタクトレンズは高度医療機器に認定され、一定の資格を持った人しか販売できないがインターネットなどの通販はこの限りではないというのも変な話です。

医薬品もその副作用の危険度によってネット通販が禁止されようとしています。
極めて道理である。

CLに起因する責任は販売店とメーカーが負います。

CLメーカーは自らが認めた技量豊かな販売施設のみに卸す。

つまり技量不安な販売施設にはメーカーは供給できないし供給してはいけないことになります。

CL検査・装着指導はCL販売施設がする。

販売施設は眼科に併設するほうがユーザーは便利で安心できると思うがこれは必須ではない。

ユーザーの販売店選択は検査販売となるので価格よりも信用できる施設を探すことになる。

販売施設は価格競争よりも技術の向上を目指してユーザーにお役に立つ競争に目覚めるでしょう。

ユーザーは自覚的異常やCL不具合は自己責任において中止したり、眼科受診となる。

コンタクト装着指導は認定眼鏡士やORTなど医師以外の眼科専門職に解禁するというのが、社会の要求に応ええる最も良い解決法と考えます。

つまり

1. CLの各種必要な検査機器を設置する。

2. 両眼屈折検査も出来る認定眼鏡士の常駐。

3. 高度管理医療機器である販売管理責任者がいる施設であること。

4. メーカーは自社レンズをきちんと検査して販売してくれる施設だけにレンズの供給を認める。

5. 検査経験と技量が優秀であると認定眼科専門医師から推薦されること。

6. 現状の眼科併設の販売施設も眼科がそのまま自院で検査をしたいのなら可能です。

以上の条件をクリアできたならそれがメガネ店であっても検査販売が可能となります。

賢明なる医師はコンタクト販売や検査には一切関わらない、宣言をしたらよいと思う。
これは医薬分業や医販分離の概念に一致するし、厚生労働省や健保組合そして税務署関係も後押しするであろう。

従来たびたび聞かれた、何不自由なくコンタクトを装用している健常者まで定期的に眼科を受診するべきという意見は、国民はもう納得しない論です。

コンタクト装用者の10人に一人に障害をおこす危険性があり、これからは日本でも、医師免許の要らないコンタクトケア専門職の養成が急務となる。

これは眼科医師にとって極めて有用であり業務を軽減してくれる・・つまり内科医にとって無くてはならないレントゲン技師のような有用なありがたい存在になるでしょう。

この存在は決して眼科医師の職務や収入をを圧迫することはありえないと思う。
むしろ慢性的な人手不足を解消することになろうかと思います。

アメリカにおけるオプトメトリストのように、認定眼鏡士にちなんでCLのフィッターを
仮にコンタクト検査士(CL検査士)と呼びます。

 

ユーザー本位のコンタクト販売システムの概要

専門眼科医師は、初回だけCL適応検査を自費検査で行い健康証明書の発行をおこなう。

CL検査を受けいれたい医師は安く設定。 辞退したい医師は高額の証明書発行料を明示する。

眼科医師の推薦・委託を受けた『CL検査士』が健康証明書に基づき検査・販売をする。

暫定として眼科医師はこれまでの販売ルートから信頼できる技術施設を推薦することになる

ユーザーは検査を受けた販売施設で店頭・宅配の自由手段でもって購入する。

『CL検査士』は処方箋の発行業務は行わない。

CL検査料金はレンズに含むものとする。

高度管理医療機器であるCLは医薬品同様ネットでの顔の見えない販売購入は禁止する。

『ユーザー本位』を考え、検査施設の責任で宅配やネットという手段は認める。

『CL検査士』は暫定処置として眼科医師の推薦で認定する。

CL検査士の技量の程はユーザーが自然と決められることになる。

ユーザーは『CL検査士』のもとで検査・指導を受ける。

CLメーカーは技量の高い『CL検査士』が在籍する施設だけに自社レンズを卸す責任がある。

PL訴訟やCLによる不具合はメーカーと『CL検査士』が責任を共有する。

ユーザーは技量が優れた『CL検査士』のいる施設に健康証明書でもって自由に移動できる。

『CL検査士』は公益に寄与する為にメーカーと協力して技術・知識を高める努力を怠らない。

ユーザーは異常を感知した際には、自己責任で専門眼科医師の診療を受けなくてはならない。

ユーザー本位ゆえにユーザー自身にも 自己責任という責務が生じます。

さあユーザーが喜ぶ販売システムを作ることが 売り上げ拡大の方策だと信じます。

また次に続く世代の為にも・・・・

投稿日:2020年10月14日 更新日:

執筆者:

新しい記事はありません

本会の元代表が全国の眼
鏡技術者向けの技術教本
を発刊しております
岡本隆博著

(近視矯正手術の後遺症対策研究会HPより)

▲ 近視手術をお考えのかたへ
安全性や後遺症についての
資料を集めたサイトです。

PAGE TOP